英国カリリオン社の破綻と世界4大会計事務所(Big4)パート1

Hagiyamaです。

2018年1月、英国ロンドン証券取引所上場の大手建設会社カリリオン(Carillion)社が破綻しました。

カリリオン社は英国における建設会社の中で2位の規模を誇る巨大企業でした。

今回はその破綻についての私見を述べたいと思います。


カリリオン社破綻のニュースは日本ではあまり報道されていなかったように思います。

ですが、これはBig4と呼ばれる世界4大会計事務所(デロイト・E&Y・KPMG・PwC)の寡占状態を揺るがすような大事件だと私は思っています。

日本で4大会計事務所(=監査法人)といえば、トーマツ・EY新日本・あずさ・PwCあらたですが、海外Big4はデロイト・EY・KPMG・PwCを指します。日本の4大監査法人はそれぞれ海外Big4と提携ないしは親子法人の関係にあります。

この英国カリリオン社の破綻は、かつて起こった米国エンロン社の破綻を彷彿とさせているように思います。

2000年代初頭のエンロン社破綻によって、当時の巨大会計事務所アーサー・アンダーセンはエンロン社に粉飾決算を指南していたとして解体に追い込まれました。

(ちなみに当時アーサー・アンダーセンと提携していた旧・朝日監査法人は、この事件を契機にKPMGと新たに提携し、あずさ監査法人として再出発しています)


話を戻しますと、カリリオン社が破綻した最も大きな原因は、大幅な赤字受注でした。

赤字受注とは平たく言えば、コストを下回る価格で受注する、つまり「コスト > 受注金額」のことです。

英国では、カリリオン社の事業モデルについて、このように揶揄されていたそうです。

「ロールスロイス並みのコストをかけて車を作り、ミニクーパー並みの値段で売っていた」

日本車でいえば、レクサス並みのコストでヴィッツ並みの販売価格で売っていたといったところでしょうか・・少しケタが違うかもしれませんが。

赤字受注自体が完全悪というわけではないのですが、何らかの原因で赤字受注をした場合には、会計処理として工事損失引当金を計上しなければなりません。

カリリオン社では、2017年半ば、突如として工事損失引当金の多額計上(845百万ポンド・当時のレートで約1,225億円)を発表しました。

カリリオン社の2016年12月期連結売上高は5,214百万ポンド(約7,560億円)、連結当期純利益が129百万ポンド(約187億円)でしたから、この引当金の計上によって大赤字となることがわかります。

この発表後、ロンドン証券市場におけるカリリオン社の株価は70%超下落し、金融機関は一斉に資金を引き上げ、結果として破綻に至りました。


ここで議論に及んだのが、「カリリオン社に対する今までの会計監査は妥当だったのか?」という点です。

KPMGはカリリオン社を1999年から破綻前までずっと会計監査を担当していましたが、その監査報告書はいずれもすべて無限定適正意見でした。

発表日の直近決算期である2016年12月末決算では、当然多額の引当金は計上されていませんでしたので、多額の工事損失引当金の計上は不要と判断したということになります。

(少し長くなったので別頁に続きます)