Hagiyamaです。
前回の記事(パート1)の続きです。
カリリオン社は多額の工事損失引当金を計上したことによって結果として破綻に追い込まれましたが、そこで議論が及んだのは、「今までの会計監査は妥当だったのか」という点です。
カリリオン社はBig4のひとつ、KPMG-UK(英国)が監査を実施していました。KPMGは1999年から同社に関与していましたので、約20年という長い期間、ずっと同じ会計事務所が監査を実施していたことになります。
同じ会計事務所が同じクライアントを長期間担当するというのは、弊害が起きやすくなります。
監査をするにあたっては独立性の立場にあることが最重要ポイントです。
ですが、KPMGによるカリリオン社の監査は、長年監査を実施していた関係で独立性に疑念が生じやすく状況になっていたと推測されます。
いくらBig4といえど、赤字受注に気づいて2016年12月末決算時まで多額の工事損失引当金を計上していなかった点について、「おかしいことはおかしい」と声を上げて言える風土がなかったのでしょう。
(工事損失引当金の監査では、赤字受注の有無を確認することは監査上の重点項目であり必須となっています)
話は変わり、日本でも2000年代後半に、当時の監査法人ビッグ4のうちの1つ旧・中央青山監査法人が、カネボウの粉飾決算を見逃して監査報告書の無限定適正意見を出しました。
その後、旧・中央青山監査法人は「みすず監査法人」と名前を変え再出発しましたが、監督官庁から自浄作用が見られないとして結果として解体に追い込まれました。
監査会計事務所とクライアントとの癒着の可能性は、世界中どこの国でも共通しているものだということです。そこに会計事務所の大小は究極的には関係のないのでしょう。
ちなみに、私の新人時代に訪問していたIPO準備会社で、とてもフランクな経理部の方から冗談交じりにこのように言われたことがあります
「なんでお金を払ってる会計事務所から監査を受けなければいけないのかがわからない。お金もらってたら独立性なんてないでしょ。税金で役所のお役人が監査すればいいんでは?」
当時新人だった私は回答に困りましたが、監査会計事務所とクライアントとの関係性について、あれから20年近く経った今、その当時の昔と状況はあまり変わってないように見えます。
会計監査制度の永遠の課題なのかもしれません。