世界各国のKAM(Key Audit Matters)導入時期

Hagiyamaです。

上場企業のサポートをしている関係でKAMに関する質問をされましたので、KAMについて述べたいと思います。

KAM(Key Audit Matters)とは、「監査上の主要な検討事項」と訳されます。


世界各国におけるKAM(米国のみ正式にはCAM:Critical Audit Matters)の適用時期は次の通りです。

英国2012年10月1日以降開始事業年度から適用
オランダ2014年12月15日以降終了事業年度から適用
国際監査基準適用国(オーストラリア・香港・ニュージーランド・中国・シンガポール・南アフリカ・北欧3か国・ブラジル等)2016年12月15日以降終了事業年度から適用
インド2018年4月1日以降開始事業年度から適用
カナダ2018年12月15日以降終了事業年度から任意適用開始(トロント証券取引所上場企業は2020年12月15日以降終了事業年度から適用)
アメリカ大規模早期提出会社:2019年6月15日以降終了事業年度から適用
上記以外:2020年12月15日以降終了事業年度から適用
日本金融商品取引法監査会社:2021年3月期からに適用(2020年3月期の早期適用可)
(※会社法監査会社には適用予定なし)

出典:「 監査上の主要な検討事項(KAM)の有意義な導入に向けて 」(日本公認会計士協会より筆者編集)


イギリスでは2013年ごろにすでにKAMが導入されています(さすが会計士制度発祥の国です)

日本では世界各国から遅れてこれからKAMを適用することになります。そのため、現在のところKAMが記載されている監査報告書は、英語含む外国語でしか存在しません。

日本語でのKAM第1号は、それら海外の監査報告書のうち参考になる記載部分を日本語に翻訳して、自社にアレンジされたものが第1号として発表されることが予想されます。


また、KAMを記載するあたって、「紋切り型の記載ではいけない」という不文律があります。紋切り型とは、鋳型に当てはめたような(つまり他社と全く同じような)文言という意味です。

逆に言えば、今までの短文式の監査報告書は、「紋切り型のようにどれも同じようなもので無個性だった」ということが言えるでしょう。
(そのため、短文式の場合だと、東芝事件のような限定付適正意見が付されれば、かなりの注目がされることにはなります)

他社事例(特に同業他社)は有用な情報かもしれませんが、あくまで他社事例は他社事例でしかありませんので、自分達で考えオリジナリティのある”活きた”記載になることが、望ましい開示と言えるでしょう。