IFRSにおけるセール・アンド・リースバックの会計処理(IFRS第16号 / 9号 / 15号)

Hagiyamaです。

今回はセール・アンド・リースバックのIFRS上の会計処理について述べます。

このテーマは、IFRS16号(リース)、IFRS9号(金融商品) 、さらにIFRS15号(収益認識) の3つの基準が関連しておりやや複雑に見えますので、ここで一度整理したいと思います。


まず、セール・アンド・リースバックとは、企業(事業会社等)が保有する資産を別会社(リース会社等)に売却し、さらにその別会社からリースし直す取引です。

この取引により、事業会社は売却による資金を手に入れることができるとともに、保有資産をリース物件として継続して使用することができます。さらには、資産を売却することによって貸借対照表のスリム化も図ることができます。

事業会社側らからみたセール・アンド・リースバックのメリットをまとめると、次の通りです。

  • 資産売却収入により資金繰りが改善する
  • 資産を売却してもリースバックすることにより資産の継続使用ができる
  • 資産が減少することによってROA(Return on Assets:純資産利益率)が改善する
  • 資産の管理手間が削減できる

次にセール・アンド・リースバックの会計処理について、この取引が資産の売却に該当するか該当しないかによって、借手・貸手ともに会計処理が変わってきます。ここが重要なポイントです。

セール(=売却)・アンド・リースバック」という名前が付けられていますが、会計処理上はIFRS15号(収益認識)の支配要件に照らして資産の消滅すなわち売却の要件を満たさず売却(セール)処理とならない場合があるため、留意が必要です。

<前提>
資産の売手または資金の借手 = 一般事業会社
資産の買手または資金の貸手 = リース会社

<会計処理>

一般事業会社  会計処理
ⅰ) 資産の売却に該当する場合
(資産の売り手となる場合)
資産の譲渡取引として資産の認識を中止し、リースバックからの利得部分を使用権資産として認識する(IFRS16号・リース)
ⅱ)資産の売却に該当しない場合
(資金の借手となる場合)
資産を担保とした金融取引として、対価と同額の金融負債(=借入金)を認識する(IFRS9号・金融商品)
   
リース会社  会計処理

ⅰ)資産の売却(買取)に該当する場合(資産の買い手となる場合)

購入取引は資産計上し、リース部分についてのみIFRS16号(リース)に従いファイナンス・リース取引またはオペレーティング・リース取引処理を実施する
ⅱ)資産の売却(買取)に該当しない場合(資金の貸手となる場合) 金融取引として金融資産(=貸付金)を認識する(IFRS9号・金融商品)

取引が売却に該当するかしないかは、IFRS15号(収益認識)の要件に照らし、事業会社が資産からリスクと経済的便益を得られるかどうか、資産の管理を行うかどうか等によって判定します。一例を出せば、仮に所有権がリース会社に移転する場合であっても、資産の維持・管理は引き続き事業会社が実施する場合は、資産の売却に該当しないと考えられます。



パッと見は少し複雑に見えますが、一つずつ紐解いていくと理解が進んでいくと思います。