Hagiyamaです。
平成31年度税制改正において、国際課税における過大支払利子税制の見直しがなされましたので解説します。
関連者間での資金借り入れについては、理論上、利息額を市場によらず関連者間で恣意的に決めることができます。
(注:関連者等とは、 直接・間接の持分割合50%以上または実質支配・被支配関係にある者、およびこれらの者による債務保証を受けた第三者等を指します )
そのため、過大支払利子に関してなんら制度がない場合、関連者間の利息を市場の利率よりも過大に払いその利息を損金算入することによって、租税の回避が可能となってしまいます。
過大支払利子税制では、そのような過大と認められる支払利子部分について損金不算入とすることにより、過剰な租税回避行動を抑制しています。
平成31年度(2019年度)税制改正においては、この過大支払利息の範囲について拡大され、税源浸食リスクに応じて利子の損金算入制限が強化されることになりました。
改正前と改正後の税制をまとめると、次のようになります(改正箇所は太字としました)。
改正前 | 改正後(2020年4月1日以後開始事業年度より) | |
対象とする利子等 | 関連者純支払利子等のみ | 純支払利子等(第三者含む) |
調整所得 | 利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算する) | 利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算しない) |
基準値 | 50% | 20% |
適用除外 | ・関連者純支払利子等の額が1,000万円以下 ・関連者への支払利子等の額が純支払利子等の額の50%以下 | ・純支払利子等の額が2,000万円以下 ・国内企業グループ(持株割合50%超)の合算純支払利子等の額が合算調整所得の20%以下 |
改正前の過大支払利子税制については、次の外部リンクご参照ください。 財務省「過大支払利子税制の概要」 (図もあって分かりやすいです)
この改正によって、原則として過大利子に関する損金不算入額は改正前よりも増加し、税負担が増えることが予想されます。
なお、損金不算入とされた支払利子等については翌7年間にわたり繰り越して損金算入が可能です。この点については変更ありません。