「時価の算定に関する会計基準」の影響

matsumotoです。以前、時価算定会計基準について、
こちらの記事をお送りしました。

今回は、基準の中身を少し掘り下げてお話したいのと、
実際にこの基準が現行の日本の会計基準(及び会計実務)にどのような
影響を与えることになるのか、ということについても触れてゆきたい
と思います。

目次

分かりにくい用語「インプット」

基準上では「インプット」と「評価技法」用いて~などと、とっつきにくい
書きぶりとなっていますが、改めて、「インプット」とは何でしょうか?
細かな基準上の定義などは前回の記事に譲るとして、私なりに整理した結果を
まとめてみると…

インプット1:
例:容易に入手可能な上場企業の株価情報
ヤフーファイナンスなどで見られる方も多いのではないでしょうか。
“活発な市場”⇒株式市場、”調整されていないもの”⇒調整しようがない
というように置き換えながら定義改めて眺めて頂くとイメージしやすい
のではないでしょうか。

インプット2:
例:借入金(貸付金)の金利
“インプット1「以外の」インプット”という定義ですが、
インプット1の定義や例を考えてみれば、”活発な市場”「以外」⇒当事者間など
“調整されていないもの”「以外」⇒何らかの調整が入るもの 
ということになります。例えば、貸出(借入)金利は、当事者間で約定される
ものですし、借手の信用力に応じて金利が調整されることもありますので、
インプット2ということになるでしょう。

インプット3:
例:株価の変動性(ボラティリティ)
こちらはそもそもインプット1、2とは別物という位置づけだと思っています。
というのも、インプット1および2は「観察可能なもの」とされているのに対し、
インプット3は「観察できない」ものということで、抽象的な概念だからです。

「インプット」って言葉はなかなか馴染めないと思います(私もそうです)が、
基準の大元であるIFRS第13号で「インプット」と使われていることもあるので、慣れるしかないですね。実際にはしっくり来る和訳がなかったのかもしれませんね笑。

さて、次は時価算定会計基準の導入に伴いどのような影響があるかということに
ついて、今回は2つ取り上げてみたいと思います。

影響その1 その他有価証券の評価が変わる

時価算定会計基準の制定に伴い、
金融商品会計基準も改正されています。内容としては、

その他有価証券の決算時の時価について、改正前では、
“当該期前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を
用いることもできる”
という、”できる規定”があったのですが、これがなくなりました。

これは時価の定義の中で、”算定日”という言葉追加されたことに
伴い、算定日というならば貸借対照表日であり、それは期末日前
1か月ではない、ということで削除されたものです。

ただし、減損の判定に際しては期末前1か月の市場価格の平均に
基づいて算定された価格を用いることができる、という今までの
規定は変わっていません。その一方で、いざ減損を算定するときは
算定時の時価(つまり、期末日における時価) を用いることになっています。
私も最初は「?」状態でしたが、減損の判定という重要に対する事務手間を
考慮してのことだと思います。

(実務的には、その他有価証券の評価について1か月平均の市場価格を使用している企業は少ないと思いますので、この新基準による影響はそれほど大きくないと考えらえます)

影響その2 時価把握困難な株式の評価が変わる

改正前:
時価を把握することが極めて困難と認めれらる、下記①~③には次の取り扱い
が認められていました。

①社債その他の債権:取得価額又は償却原価
②①以外の有価証券:取得原価
③デリバティブ取引:取得原価

時価算定会計基準では観察可能なインプット(インプット1か2)を入手
できない場合であっても入手できる最良の情報に基づく、観察できない
インプット(つまりインプット3)に基づき、時価を算定することとされました。
それゆえに、「 時価を把握することが極めて困難 」という状況は想定されない
ということになります。

その結果、貸借対照表価額は次のように改められました。
改正後:
① 社債その他の債権:時価
② ①以外の有価証券:時価
③ デリバティブ取引:時価

一方で、変わらないものものあります。それは、市場価格のない株式の評価です。
こちらについてはこれまで通り、取得原価をもって貸借対照表価額とする
ものとされています。

終わりに

時価算定会計基準は今回取り上げた変更点にもあるように、一部の金融商品
に時価の算定方法がに影響を及ぼしています。注意しておきましょう。
以上、matsumotoでした。