粉飾決算をする経営者の心理

Hagiyamaです。

私は若かりし頃に公認会計士として上場企業の監査をしていましたが、企業で粉飾決算(window dressing)の現場に出くわしたことが何度かあります。
「どれだけ大手企業であっても粉飾決算をする」という事実を知った時、驚きや怒りというよりも、悲しさのほうが大きかったという記憶があります。
その悲しさとはどういうものかというと、コンプライアンス(法蓮順守)を犠牲にしてまで、自社や自分の利益(つまりはお金)を優先するのかということです。
また、監査の対応をしていた経理部や管理部の方々に裏切られたという気持ちもあり、その時には人間不信になりそうでした。

粉飾決算をする心理としては、

  • 「ちょっとくらいならいいか」
  • 「会計士監査でもここはあまりチェックされないし」

といった心理もあるのだと思います。
この”ちょっとくらい”という心理が、だんだんと歯止めがきかなくなり、雪だるま式に膨らんできて大きく跳ね返ってきます。
そして気がついた時にはもはや取り返しのつかない状況に・・


また、私は粉飾決算の中でも致命的だと思う点は、粉飾決算をすると自分の心までも粉飾してしまうという点にあると思っています。

実際にはない売上を水増しして利益計上したという場合においては、

  • 「ああ、今期はこんなに利益が出て本当によかった」
  • 「利益も出ているしもうこれで一安心だ」

と思ってしまう点です。

見せかけの決算書に将来入金のない利益計上を見て、経営者は「利益が出てよかった」と安心してしまう・・
この場合は単に臭いものにフタをしたというだけで、根本的な問題は何にも解決していないということに、経営者は気が付いていません。


「自社の業績を良く見せたい」という経営者の自己顕示欲や虚栄心がある限り、粉飾決算は世の中から無くなることはないと思います。
この世に正義ある限り、粉飾決算は遅かれ早かれいずれ必ず明るみになります。

もし赤字が出た場合には、赤字を違法な方法で隠すのではなく、赤字が出てしまう原因を追及することが、企業としてあるべき姿だと実感します。