M&Aにおける債務免除益と期限切れ欠損金の使用による節税効果

Hagiyamaです。

11月に入ってから寒さが一層際立つようになりました。

コロナ禍はいまだ収束の兆しが見えておらず、個人的には11月に受けようと思い準備していた海外に関する資格試験(日本でも受験可)が中止となりました。残念ですが仕方ありません。

これから冬にかけてインフルエンザも流行り始めることから、気の抜けない日々が続きます。

「インフルエンザなんてタ〇フル飲んで数日安静にしてたら治る」という風に、「コロナなんて○○の薬飲んで寝たら治る」という時代が来ればいいのにと思います。

 

目次

企業が業績不振となる原因(偏見)

さて、今回は業績不振企業のM&A(企業買収)の話をします。

M&Aの現場においては、業績不振の企業を安価で買収し、買い手のノウハウを買収先企業に取り入れて立て直しグループ利益の最大化を目指す・・という事がとても良く行われています。

業績不振な企業と言っても、製品や事業が売れていないから業績が悪いという企業ばかりでなく、製品や事業自体には収益力がある場合もあります。

事業自体が収益力があると思われるにもかかわらず業績が振るわない原因としては、個人的には経営者の手腕にかかっている部分が大きいように思います。

偏見かもしれませんが、企業規模や業績に見合わない立派なオフィスを構えていたり、また高級な社用車を持っているような企業は要注意だと思っています。

これらはいわば社長の見栄・・つまりは身の丈(=収益)に合っていないコストをかけているということになります(偏見満載ですみません)。

 

債務免除益に関する税務上の取り扱い

M&Aでネックとなるのが、業績不振な売り手企業の持つ多額の借入金です。

業績不振の企業では複数の金融機関から多額の借入金をしており、それらの借入金には必ずといってほど社長の個人保証が付いています(でないと金融機関が貸してくれない)。

社長がどんなにひどいことをする人であっても、もし会社がつぶれしまえば社長自身が借入金を背負うことになり、そうなれば自己破産するしかありません。

業績が良くない企業の社長は常にイライラしており、そんな社長のパワハラに悩まされている従業員は世の中に数知れずいると思いますが、そんな社長であっても会社の借入金の保証人となり自分の人生をかけているいるんですね(注:決してパワハラを肯定しているわけではありません)

 

・・・閑話休題。

多額の借入金のある会社については、M&Aの際に税務上の要件を充たせば、借入金の免除益について節税効果を取ることができます。

借入金の債務が免除された場合において、会計上、下記の債務免除益が仕訳計上されます。

(借)借入金 xxx / (貸)債務免除益 xxx

この仕訳の貸方の債務免除益は収益(特別利益)となり、税務上もそのまま益金となります。「税務上も益金になる」ということは、債務免除益に対して課税され税金が発生するということです。

 

ですが、債務を免除してもらうような業績不振の企業にとっては、担税力(=税金の支払い能力)は通常ありません。

銀行から債務を免除をしてもらったはいいけど、その債務免除益に課税されても税金は払えない・・

これが本心でしょう。

これには救済策があり、法人税法において下記の取り扱いが定められています。

債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等、恣意性がなく、かつ、合理的な資産の整理を行った場合は、債務免除額に達するまでの金額を上限として、期限切れ欠損金の損金算入が認められる。(法人税法第59条第2項 ←電子政府の総合窓口「e-Gov」リンク)

 

ポイントは下記の2点です。

  1. 債務免除される債務に恣意性がない(=全て債務について債権者の協議によって一律に債務免除される)
  2. 合理的な資産の整理(=M&A等による不採算部門や遊休資産の整理)

注意点としては、債務免除益自体が非課税(=益金不算入)となるわけではないということです。あくまで債務免除益を益金として認識したうえで、期限切れ欠損金の使用によりその税金を減額するということになります。

 

期限切れ欠損金が使用できる趣旨

繰り返しになりますが、そもそも債務免除をしなければ存続できないほどの業績不振の会社が、債務免除してもらって課税されたとしても納税資金があるはずもない・・というのが現状です。

債務免除益にかかる税金を払うために、銀行からさらにお金を借りて税金を払うという、本末転倒な結果になります。

税務では会社再生のために一定の救済を与え、債務免除益に対しては要件を充たせば過去に期限切れとなった繰越欠損金を使用できます。

 

世間的には「税金は何が何でもお金を国に納めないといけない」といった考えがありますが、これは正しくもあり間違いでもあります。

税金は国としては必要経費に使用し、身近なところでは警察や消防など公共サービスを利用し豊かで安全な生活を享受している以上は、法人含む国民は税金を納める義務があります。

そのため、社会通念において公共の利益になるものであれば、発生した益金に対して税金を納めなくて済むような制度を備えることが、税収が一時的に少なくなったとしても結果として社会全体としての利益となります。

これは、「課税の公平」の考え方ともマッチします。

「何をもって企業(=納税者)と国(=公共社会全体)の双方にとって公平といえるか?」と考えると、あるべき制度とその趣旨が見えてくるかもしれません。

またその趣旨をクライアントに説明するのが、我々専門家としての役割だと思います。

・・・

(話がころっと変わりますが、2019年10月に導入された消費税の軽減税率は、個人的には課税の公平さをものすごく欠いている制度だと思ってます。

なんでイートインの税率が10%でテイクアウトが8%なのでしょうか、なぜニュースペーパーが8%なのでしょうか。。

「店内の密集を避けるために、テイクアウトの消費税は無税!」とかなら話はものすごくわかるのですが・・軽減税率はコロナ蔓延前に決められた制度なので、今後の改正議論を期待します)