Hagiyamaです。
2020年度のアクチュアリー試験科目に合格しました。
合格した科目は会計・経済・投資理論(通称KKT)です。
2019年度のKKT試験には落ちましたので、2度目の受験で合格したことになります。
今回はこのKKTの勉強方法について述べます。
目次
「会計」の勉強方法
私は公認会計士なので、専門は会計です。
なのでノー勉でいけるかと思いきや、過去問を見ると実務ではほとんど出てこないような概念や論点が割と出てきます(物価変動会計とか資本主理論とか)
そのため全くのノー勉で臨むというわけにはいかず、それなりの勉強対策が必要と思いました。
理論問題について、テキストは何度も読んでほぼ暗記しました。これは知識の差があると思いますが、丸暗記でも十分試験に望めると思います。
計算問題はテキストの例題が数値を変えて出てくることが多いため、テキストの例題を解いて理解していれば、合格点に十分達することができると思います。
出題の傾向として、固定資産の減損会計や満期保有目的債券の償却原価法など、アクチュアリーが実務でも使うであろう「割引現在価値」を使用する項目が試験に出やすいイメージです。
また退職給付会計については、試験対策だけに留まらず、年金数理計算を専門とするアクチュアリーとして必須の知識だと思います。
もしアクチュアリーとして退職給付債務計算関係の仕事をする予定がないとしても、もしこの知識が無ければ、たとえば「退職給付会計をよく知らないアクチュアリー = 刑法をよく知らない弁護士」のような、良くないイメージを持たれるかも・・
退職給付会計は少々複雑な構造になっていますが、数理計算の専門家として最低限の理解は必要だと思います。実際にも、数年に1度は退職給付会計が出題されています。
会計まとめ:
「テキストの例題を完璧にやる、あとはテキストのひたすら暗記。退職給付は専門家として最低限の理解が必要」
「経済」の勉強方法
一昔前の過去問では、ミクロ経済・マクロ経済ともに比較的オーソドックスな出題でしたが、近年では問題に一捻りが加えられ「本当に理解しているかどうか」を問う問題が増えてきており、やや難化傾向にあると思います。
指定のテキストには計算問題があまり掲載されていないため、独自の対策が必要でした。
また経済学はかなりイメージしにくい学問のように思いますので、数式や計算を解きながらも、「これはどういう意味を表すのか」というイメージを膨らませることが大切だと思います。
ミクロ経済で言えば生産者余剰・消費者余剰の意味や間接税導入や輸入の効果、マクロ経済で言えばハイパワードマネーの増減とマーシャルkの関係など。。
あと私にとって理解が最も難しかったのが、ナッシュ均衡などで代表されるゲーム理論でした。
テキストだけではほとんど理解できず、過去問を見ても最初は意味不明でしたが、Youtubeでナッシュ均衡の解説サイトを見てテキスト以外の独自の勉強をしてから、だんだんと腑に落ちるようになってきました。
ですが、それでも2020年の問題(3者間ゲーム)については、本番では解けず・・
経済は問題によって難易度の差がかなり大きいと感じましたので、経済が苦手な方は基本的な問題だけを解いて最低点クリアさえすればそれでいいのではないかと思います。
あとは選択肢が8択与えられているので、変数(αやβなど)を求める問題でも選択肢の数値から逆算で推定するテクニックが使える場合もあります。
経済最初の〇×正誤問題は曲者でした。全ての選択肢に答えないと基本的に正解しないので、対策としては過去問の正誤問題だけをまとめて並べて、繰り返し読むことにしました(作成したPDFデータです、著作権フリー)。
こうやって問題を並べてみると、年度ごとに似たような内容を文言を少しだけ変えて出題されているということがわかります。この文言を少しだけ変えてくるというのがネックで、たとえば弾力的か非弾力的か・曲線の傾きが急か緩やかかで正誤が反対になるので、受験者の理解を試されています。
正誤問題の対策としては、概念を完全に理解するか、それとも問題を何度も繰り返し繰り返し解いて記憶を完全に定着させるかのどちらかかと思います。
経済まとめ:
「基本的な問題は落とさない。テキストだけで理解できない項目はYoutube等も活用する」
「投資理論」の勉強方法
投資理論の配点は50点でKKTの半分を占めます。合否を決める科目と言っていいでしょう。
2019年の試験では、私は投資理論で息切れを起こしました。
少し受験時の体験談を話すと、試験時間は3時間、前から順番に解けばだいたい1時間半で会計と経済を終わらせて投資理論に取り掛かかる時のことです。
投資理論の1問目で解けると思っていた問題で答えが出ないミスをおかし、パニックに陥り頭の中が真っ白になりました。
その後、ベータを求めるだけの簡単な連立方程式を解くだけのリスク・ニュートラル・プライシングも、ペンと電卓を持つ手が動かなくなりました。脳に糖分補給をしようにも、目の前にあるのはペットボトルの水のみ。
会計→経済と休みなく解いてきた脳が、ここでおそらく酸欠を起こしていたのだと思います。
結果、不合格となりました。あとで解いてみるととてもカンタンな問題・・
今回の2020年の試験では前回のこの失敗を踏まえ、会計が解き終わった時に何もせず1分間休み、経済が解き終わった時にも何もせず1分間休み、そして休んでいる時にスポーツドリンクを飲んで脳にエネルギー糖分を補給し、気持ちを完全に切り替えるようにしました。
おかげで今年は酸欠を起こさず冷静になることができ、投資理論の最後まで問題を解くことができたように思います。
さて前置きが長くなりましたが、投資理論は株価算定などのバリュエーションや、証券アナリスト試験の内容と重なる部分が多いと思います。
なにぶん問題数が多いので、まずは足切りにならないよう注意が必要です。
また、最初の問題から順番に取り掛かるのではなく、問題全体を見渡して解ける問題から解くべきです。
1問目が一番簡単というわけではなく、後ろのほうにある問題が簡単という事もよくあります。
(たとえば転換社債のパリティなどは金額を公式に当てはめるだけでなので、下書きすることなく一瞬で答えを求められます)
投資理論の問題を解く際には、アクチュアリーの他科目との連携(特に数学)が役に立つように思います。
ポートフォリオ理論で出てくる分散や相関係数、投資家選好の指数関数などは、数学でも出てきます。
また、テキスト実践編の債券・株式・デリバティブの問題は計算量が少なめなことが多く、比較的得点源にしやすいと思います。
逆に、理論編のポートフォリオ(接点を求める問題等)は計算量が多い場合があるので、私は後回しにしました。
投資理論ではたまに過去問になかったような新問題が出題されますが(2019年の社債デフォルト、2020年の統計等)、ほとんどの問題は過去問の類似問題が多いように思います。
そのため、過去問の類似問題で計算量の少なそうな問題は必ず押さえるようにし、初見の新問題は解けそう場合のみに解くようにしました。
投資理論まとめ:
「テキストと過去問を理解する、計算量の少ない項目を先に解く、会計・経済を先に解いた場合は酸欠に注意」
KKT勉強方法まとめ
どの試験でも同じことが言えるかもしれませんが、限られた試験時間内で基本的な問題(=きとんと勉強していれば誰でも取れる問題)をいかに多く取れるかがカギだと感じました。
あとは足切りに注意。1つでも苦手科目を作ると受からないので、会計も経済も投資理論も満遍なく学習する必要があります。
KKTはアクチュアリーの試験科目の中でも勉強時間をかければかけるほど合格に近づくと言われている科目なので、苦手科目があっても捨てたりせず、理解できるまでテキストだけに留まらず他の書籍やネット情報など手を尽くして、ひたすら続けることが肝心だと思います。
この記事がアクチュアリーを目指す方の一助になればうれしく思います。
【追記】
アクチュアリー受験研究会(アクチュアリー受験生のためのオンラインサークル)から、KKTに関する参考書が発売されました。
私のKKT受験時代この本はまだ発売されてなかったのですが、合格後に本屋で手に取って読んだところ、計4冊もある教科書の情報が1冊にコンパクトにまとまっており、また過去問がとてもよく分析されているという印象でした。
このような本があれば、私はもっと早く合格できたのではないかと思います。