デジタル革命と会計監査業界の将来

Hagiyamaです。

会計監査は公認会計士の独占業務であり、公認会計士資格がないと会計監査を実施することは基本的にできません。

会計監査業務はいわば会計士業界の独占状態にあり、ここ数年間は会計監査の担い手である会計士の人手不足の状態が続いているわけですが、この後はどうなるでしょうか。

自分のいる業界を批判するのは少し憚れますが、私はこの業界は世間よりも少しばかり遅れているように感じます。

監査の現場では、作成する監査調書を場合によっては手書きで作成することがあります。大手監査法人では監査システムによりペーパーレスで調書を作成しますが、調書作成に関して業務の自動化するまでには至っておらず、増減分析表 (前年度金額と当年度金額の比較分析表) などのデータ作成はエクセルによる手作業の部分がまだまだあります。

その一方で、最近、大手金融機関ではAI(人工知能)やRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の活用により、業務に必要な人員を大幅に減らしているというニュースを見るようになりました。このニュースを見ると、会計士業界とは対照的だと感じます。


私は今後、監査の業界においても業務自動化の流れがどんどん進み、避けられないものになると思っています。

私が思う監査業界の未来では、「監査ツール」なるものができ、今実施している手作業の業務はほとんど自動化され、残る業務は機械では実施できない判断業務のみが残ると思っています。

具体的には、クライアントの会計データをその監査ツールにインポートし、例えば「増減比較表作成」ボタンなるものをぽちっと押せば、ぱぱぱっと増減分析資料を自動的に作成していくれるような仕組みが出来上がっていると思っています。

さらには、詳細な分析をしたい場合に、例えば支店や店舗(拠点)ごとの販売促進費(変動費)と売上高の関係性を統計的に分析したデータを自動作成してくれるようになると思います。 (この仕組みをもう少し正確に言うならば、拠点ごとの変動費と売上高のデータに基づき、両者の回帰分析とR値を自動的に出してくれるような仕組みです。ちなみにこの分析表もエクセルによる手作業で作成しています)

会計士は監査ツールが自動作成したデータを見て、異常値のある個所についてクライアントの担当者に質問したり実際に証憑書類を見たりして、異常の原因を突き詰めていくという形式に変わっていくと思います。


上記については私の単なる予想に過ぎませんが、もし将来においてこのような「監査自動化」の仕組みができあがった場合、今の業務で実施している手書きやエクセルでの資料作成業務はなくなり、業務が大幅に削減されることになります。


他業界の話ですが、2019年5月24日に成立したデジタルファースト法(行政手続きを原則として電子申請に統一するための法)が成立しましたが、この法によって、司法書士の仕事が大幅に減少すると言われています。

この法では、登記などの行政手続はすべてオンラインによって行われ、かつ丁寧なマニュアルによって手続きが容易になることが期待されています。つまり、従来は司法書士に依頼していた登記変更などの行政手続きについて、わざわざ費用をかけて司法書士に依頼するということがなくなっていくということを意味しています。

このデジタル革命、会計士業界でどの業界でも決して他人事ではなく、あらゆる業界で同じような自動化の波が襲ってくることでしょう。

(自動化されることがないのは、スポーツや芸術分野におけるプレーヤーくらいでしょうか・・)


進化論で有名なダーウィンは、このように述べています。

「生き残る種族は最も強い種族でもなければ、最も賢い種族でもない。変化に対して最も適応した種族である」
It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.


変化は避けられないので、変化に最も適用したものが生き残る、これは変化せずに古い慣習にしがみついていると、その業界はいずれ衰退の一途をたどるということを意味しています。

生き残るために、常に時代の変化を注視していきたいと思います。