Hagiyamaです。
税理士業界では知らない人はいないと言われている、「長崎年金二重課税事件」についての本を読みました。
江崎鶴男税理士の強いなまりの長崎弁(?)で語られる口調にグイグイと引き込まれ、そこそこ量のある本なのに一気に読み切ることができました。
事件の概要は、亡くなった夫の生命保険金に相続税が課税され、そのあと妻が保険金を年金で受給するごとに保険会社から源泉所得税が課税されていたというものです。
つまり、「生命保険金の受け取り」という一つの事象に対して、相続税と所得税が二重で課税されていたということになります。
これは税理士でなくてもおかしいと思います。
税務当局とのやりとりで紆余曲折の結果、訴訟額は25,400円となりましたが、国全体に与えた影響額を試算すると約300億円あるとも言われています。
これは決して昭和の昔話ではなく、平成14年~平成21年というごく最近の出来事です。
次の文は、本の内容で印象に残った部分です。
最高裁判所における江崎税理士の陳述がとても印象的でした。
私はタバコを吸います。
(最高裁判所での陳述・一部改編)
国のやっていることは、タバコの箱に課税し、そのあとその箱の中のタバコを1本吸うごとにさらに課税しているようなものです。
これは、タバコの箱=相続財産、タバコを1本吸うこと=年金の受給 としており、それぞれ相続税と所得税を課税しているとして二重課税となっていることを述べており、極めて分かりやすい説明です。
「頭の良い方は喩えが上手い」といいますが、この事件は喩えの上手い江崎税理士だからこそ、国に勝訴できたのだという感があります。
税務訴訟の勝率は約7%と言われています。これは、百戦錬磨の国相手であり、税務(すなわち税法)に関する極めて高い論理性が求められるためでしょう。
また、税務に強い弁護士が少ないというのも勝率が低い理由としてあるのかもしれません。
「おかしいことはおかしい!」とはっきり主張することは、とても難しいし骨の折れることだけど、とても大切なことだと実感します。
最後まで自分の信念を貫いた江崎税理士からは、学べることばかりでした。