資本金が1億円超となった場合の法人税負担の増加影響

Hagiyamaです。

今回は法人税の話です。

法人税法では、資本金1億円以下の法人は「中小法人」として定義されており、中小法人には様々な税務上の優遇措置が認められています。

ちなみに少し面倒な話ですが、法人税法以外での法律では、中小法人の定義について資本金の基準金額が異なります。たとえば会社法における大会社は資本金5億円以上または負債200億円以上と定義されていますし、中小企業基本法では業種によって中小企業の定義が異なっています。

今回の話は、あくまで「法人税法上の中小企業」(=資本金が1億円以下)のことです。


2019年9月時点において、法人税法上の「中小法人」が受けられる主な税務メリットは次の通りです。

  • 軽減法人税率の適用:800万円以下の所得に対して軽減法人税率が適用
  • 繰越欠損金の控除割合が100%
  • 欠損金の繰戻しによる還付制度あり
  • 800万円以下の交際費の全額が損金算入可能
  • 取得価額が30万円未満の少額減価償却資産につき一括経費処理が可能
  • 投資促進税制(機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)の適用が可能
  • 法人事業税の外形標準課税の不適用

(注:例示列挙。制度や金額基準・パーセンテージは2019年9月時点のものであり今後は変更となる可能性があり)


この中では、外形標準課税の不適用は税負担の観点からは影響が大きいのではないでしょうか。

仮に資本金が1億円を超え外形標準課税が適用されると、付加価値割や資本割については課税所得が赤字であっても税金が発生しますので、一般的には税負担は増えます。


中小法人は税制上の優遇がある一方で、資本金はより大きいほうが企業規模が大きく見え、ビジネス上でもより大きな取引ができる場合があると思います。

資本金を1億円以下にするか、それとも1億円超にするかは、悩ましいところです。(ちなみに資本金が5億円を超えると会社法上の大会社となり、外部の監査人による会計監査が必要となるため、税金以外のコストが増えます)

M&Aにおける増資等によって資本金が1億円を超える場合、上記で述べたような法人税法上の中小法人メリットが取れなくなりますので、M&Aを考える際においてこれらの税負担の増加も考慮に入れる必要があります。