日本の売上計上基準とIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の違い

Hagiyamaです。

私はとある外国人の会計士が、「日本基準ベースの売上高は海外ではあまり信用されていない」と仰っていたのを聞いたことがあります。

この方は日本の会計基準に詳しく、日本基準では包括的な売上計上基準がほとんどないということをよくご存じなのでしょう。

 

現在、日本基準でも収益認識基準の変更が予定されています。

この収益認識基準は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の内容をほとんどそのまま準用する形となっています。

 

現在の日本基準において売上計上ルールとして広く認識されているのは、「実現主義」という、歴史的な財務諸表論で述べられているような方法のみです。

「実現主義」とは、次の2点を満たした時点で売上認識をするという考え方です。

  1. 財貨または用役の移転
  2. 上記に対応する現金又は現金等価物の受領

 

簡単に言えば、モノやサービスを提供して、現金を受け取ったり請求できる権利を手に入れた時点で、売上計上する考え方です。

この実現主義に反していなければ、売上の計上が認められるということになります。

 

ここで、この日本基準とIFRSを違いを述べるうえで、簡単な例を出したいと思います。

モノを売って現金等価物(売掛金を請求する権利)を受領したとして、モノを販売した後にそのモノの返品がものすごく多い場合、両基準の違いはどうなるでしょうか?

 

日本基準では、いったん売上を計上した後、返品されたモノについて売上の取消し処理をします。

そして場合によっては、返品調整引当金を計上することもあります。

いずれにしても、売上の計上時点では、返品部分は売上高に反映されません。

(例)
モノを100個売上、うち10個の返品が見込まれる

<日本基準>

(借)売掛金 100 /(貸)売上100
(借)返品調整引当金繰入額 10/(貸)返品調整引当金 10

 

後日返品時

(借)売上高 100/(貸)売掛金 100

 

 

一方、IFRS15号では、返品権は変動対価の一種という扱いになり、顧客に返金する義務を認識します。

<IFRS>
(借方)売掛金 100 /(貸方)売上高 90 および 返品負債10

 

上記の結果、両基準には、売上計上時において売上高に10の差異が発生します。

日本基準:売上100

IFRS:売上90

 

上記の例でいえば、IFRSのほうが日本基準よりも売上高が少なくなります。

 

IFRSが適用されたからといっても必ずしも売上高が下がるわけではないですが、下がることのほうが多いようです。

(一般的には、百貨店業界ではIFRSを適用すると売上高が日本基準と比べて半分くらいの額になると言われていますが、こちらについては後述します)

IFRSを適用する際、従来の日本基準では認められていた売上高が認められなくなる可能性もあるため、慎重に検討が必要です。