Hagiyamaです。
先日、IFRSベースの財務デューデリジェンス(DD)の役員報告会がありました。
この財務DDにおいて、私達のクライアント(買い手)からは次のようなご要望がありました。
「買収対象会社(売り手)にIFRSを適用したらどのような項目に影響があるかをリストアップしてほしい」
対象会社はシンプルな業種でしたが、それでも日本基準とIFRSの差として、全部で13項目をリストアップしました。
この差をリストアップしていて、日本基準はIFRSへのコンバージェンス(収斂)が進んでいるとはいえ、まだまだ両基準には開きがあります。
先日の記事でも述べた通り、2021年3月期から日本基準において収益(売上)の認識基準が変わる予定です。
この新しい収益認識基準は、IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」をほとんどそのまま受けたものです。
10年くらい前から、「日本に国際会計基準を適用すると、売上の認識が出荷基準ではなくて検収基準になるから売上計上のタイミングが遅くなる」と言われていました。
(当時はIFRS15号がまだなかったので、IAS(IAS18号「収益」、IAS11号「工事契約」が該当します)
IFRS15号において一時点において収益認識をする場合、「資産に対する支配が顧客に移転した時点」で収益認識を認識するとされています。
支配が顧客に移転していることを示す状況の例として、下記の5つの場合が挙げられています。
- 企業が資産に対する支払を受ける現在の権利を有している
- 顧客が資産の法的な所有権を取得している
- 企業が顧客に資産の物理的占有を移転した
- 顧客が資産の所有に伴う重要なリスクと経済価値を有している
- 顧客が資産を検収した
こうやって並べると複雑ですね。
1に関しては、日本の商慣行では出荷時に現金を受ける権利を有するようにも見えます。
さらに、4のリスクと経済価値とはどういう概念でしょうか。
ですが商品販売業(モノの販売)に限定すると、もっとシンプルに簡単に考えると、わかりやすくなります。
「モノを受け取る前にそのモノが何らかの理由で無くなった場合、顧客はそのリスクを負うか?」
ということに尽きます。
例えば、モノの配送中に災害が起きて、配送ができなくなった場合を挙げてみましょう。
その場合、普通は顧客はリスクを負わないですね。
もし出荷時にリスクが移転しているとして出荷時に売上した場合、
顧客から見た場合はモノを受け取っていないのに支払をしなければならないといった場合、顧客からすれば、
「なんでまだモノを受け取っていないのに、お金を払わなければならんのだ」
と考え、支払いを拒否するはずです。
この状態は顧客がリスクを負っている状態とは言えません。
商品販売業の企業としての義務は、お客さんに傷のないきちんとしたモノを届けることで果たすことができると考えられます。
そのため、モノを出荷したけどお客さんにまだモノが届いていない状況(=出荷基準)では、販売業としての義務をすべて果たしたとは言えません。
出荷基準での売上計上は、性善説に立つ日本独特のもので、ガラパゴスなものなのかもしれません。
産業のボーダーレス化に従って、会計基準も変わる時が来ているのだと実感します。