IFRS適用の明確な目的とは

Hagiyamaです。

私がこの事務所(夕星国際)を設立する以前からずっとお世話になっているクライアントの経理部の方から、こういったご相談(雑談?)をされたことがあります。

「基本的なことですみません、IFRSを適用したら会社はどう変わると思われますか?」

少し漠然とした内容だったので、私は答えに詰まってしまいました。

 

詳しく聞いたところ、社長や経営陣がIFRSの適用について考えているとのことです。

どうやら、同業他社がIFRS適用を検討しているという情報をどこからか入手したので、うちも検討する・・というのが背景にあるようです。

 

私はこう答えました。

「IFRSを適用しても、意識が変わらなければ会社は今までとあまり変わらないと思います。

下手すれば事務的な負担が増えるだけになる可能性すらあるかもしれません」

当たり障りのない答えを言ったつもりですが、幸いなことに、そのクライアントの方は私の回答に納得されたご様子でした。

 

IFRSは会社を変えるようなツールではなく、会社が選択適用する会計基準のうちの一つに過ぎません。

現在において日本企業が選択できる会計基準は、日本基準・IFRS・米国基準(米国上場の場合)くらいでしょうか。

ただ、IFRSはボーダー(国境)に関係なく、グローバルに適用されている会計基準という点に大きな特徴があります。

 

IFRSについては、日本にも強制適用すべきという議論があります。

今年2018年7月に行われた公認会計士制度70周年の記念式典において、安倍総理大臣からのビデオメッセージでがありました。

総理はこのように仰っています。

「内閣では日本の上場企業に対してIFRSを適用するかどうかについての議論をしている」ということを仰っていました。

これは、将来のいずれかの時点においてIFRSの適用が避けられない状況にあると言っても過言ではないといえるでしょう。

(思えばIFRSの強制適用は200x年ごろからずっと議論されていたことではありますが、いろんな原因があって延び延びになっている議論なのでしょう)

 

IFRSベースの決算書は、海外の投資家からすれば信頼されることは間違いない事実です。

日本基準も含むIFRSではないローカル基準で作成された決算書には、その国の税務や政治的な要素に会計処理が引っ張られる面があり、同業他社の決算書を国別に比較しづらいという致命的な欠点があります。

 

現時点において、IFRSを適用するかどうかは任意です。

なので、任意なのにIFRSを適用するというからには、「なぜ任意なのにわざわざIFRSを適用するのか」という問いに対する答えを持つ。。

つまり、「IFRSを適用する明確な目的」というものを持つ必要があると考えます。

グローバルに活動している(もしくは今後していきたい)と考える企業にとっては、IFRS適用の意義はあると思います。

たとえば、ユニクロや楽天のような企業では、会計基準以外にも社内での公用語を英語にしたりなどの取り組みがあります。(社内公用語を英語にすることの是非については、こちらでは議論しません)

国内だけでなく国際的にもビジネスを展開していきたいと考えるならば、IFRSの適用によって資金を募ることのできる投資家の範囲が広がるはずです。

一方で、ただ単に「他社がIFRSを適用しているから」といった漠然とした点だと、事務負担が増えることを覚悟しなくてはなりません。

私は少なくともIFRSを適用した後に日本基準にまた戻すという事例は見たことありません(理論的には可能です)

IFRSの適用において、メリット(海外展開等)とデメリット(事務負担の増加等)を比較し、メリットのほうが大きいと考えるのであれば適用検討の余地があります。