IFRSにおける引当金

matsumotoです。

そろそろゴールデンウイークですね。

10連休に笑うか泣くか。旅行などに行かれる方も多いでしょう。

我々の業界一般的には、3月決算会社の監査の追い込みどころなので、
「泣く」方が多いのかも知れません。ちなみ私も「泣く」方ですが、
めげずに頑張っていきたいと思います。

さて、今回は「引当金」に触れてみようと思います。
なぜ、突然の「引当金」か。それは単に私が最近触れる機会が多いからです笑。
今回は総論的なお話になるかと思います。それでは早速始めていきましょう。

目次

日本における引当金の取扱い

日本基準としては、企業会計原則注解18に4つの要件が規定されています。

①将来の特定の費用又は損失であって
②その発生が当期以前の事象に起因し、
③その発生の可能性が高く、
④その金額を合理的に見積もることができる

基本的にはこの4つの要件に当てはめて判定することになります。
これらを満たすのであれば引当金として計上しなければならず、
一つでも満たさないのであれば、偶発債務として注記することになります。

IFRSにおける引当金の取扱い

IFRSでは、IAS37号で次のように規定されています。

引当金とは、その時期また金額が不確実な負債をいい(IAS37-10)、
次の条件の全てお満たす場合に財政状態計算書上の負債として計上される(IAS37-14)

①過去の事象の結果として”現在の”債務(法的又は推定的)を有している
②経済的便益を有する資源の流出可能性が高い
③債務の金額ついて信頼できる見積りが可能

基準間差異

①債務性の有無は?

IFRSでは、「現在債務」か「推定的債務」という債務性が要求されているのに対して、
日本基準では債務性については触れられていません。
従って、例えば修繕積立金のように、修繕という将来事象に備えて設定するものは、
日本基準上は4つの要件を満たす限りにおいては引当金が計上されるのに対して、
IFRSにおいては将来の修繕は債務性が認められないため、計上が認められないこととなります。

②「可能性が高い」とは?

IFRSにおける「可能性が高い」というのは、起こらない可能性よりも、
起こる可能性の方が高い、つまり50%超かを意味しています。(原文では[probable]という言葉で示されています。)
日本基準においても「可能性が高い」という表現が使われていますが、少なくともIFRSにおけるレベル感よりは高いものと考えらえていますので、①の債務性の問題はさておき、発生可能性の観点からすれば、IFRSの方が計上できる場面が増えるかもしれません。

③具体的な取扱いの有無は?

実は日本基準では企業会計原則の4要件が定められているのみで、詳細な規定がなかったりしますが、IFRSにおいて上記の一般的な規定のほかに「リストラクチャリング」、「不利な契約」(詳細は別の機会に)など、個別の定めが設けられているものもあります。

IFRSの実務で留意すべきこと

個人的には、債務性の有無がポイントになるのかなと思っています。発生可能性のレベル感の問題もあるのですが、債務性の次のステップの話だと思いますし、日本基準では定かではなく、IFRSでは明確な記載があるのが債務性に関する記述ですので。
従って、日本基準からの意向を検討される際には、現在計上されている引当金について、債務性の有無という観点からの見直しが重要な作業となるでしょう。
ちなみに、matsumotoが遭遇した事例としては「製品保証引当金」がありました。これは、将来の製品の欠陥などを保証するための引当金であり、日本基準では4要件を満たすために引当金を計上していたのですが、果たしてそれは現在の義務なのか…という点で議論が紛糾したのでした。

終わりに

ざっくりですが、引当金について日本とIFRSの比較という形で書いてみました。引当金といえば、「会計上の見積り」の際たる例であり、上場企業となればその金額的影響も大きく、重要な項目にもなりやすいので、IFRSへの意向を検討される際には、優先度が高いものとなるかもしれません。そのときには「債務性の有無」というお話を思い出して頂ければ幸いです。
以上、matsumotoでした。
(気が向いたら各論的なお話も書けたら良いなと思います。)