IFRS第1号(初度適用)における為替換算調整勘定の会計処理

おはようございます。matsumotoです。

IFRSの現場においてmatsumotoが関与した事例をお届けします。

今回は、為替換算調整勘定についてです。

目次

為替換算調整勘定とは?

まずは為替換算調整勘定についておさらいしましょう。

海外子会社を連結する際には、現地通貨を円換算する必要があるのですが、
そのときの換算のルールとして、以下の3つのレートが用いられます。

①取引時レート(Historical Rate:HR)
②期中平均レート(Avrrage Rate:AR)
③期末レート(Current Rate:CR)

そして、海外子会社のB/Sを換算する際には、

①資本金:HR
②利益剰余金(初回はHR→以降、当期利益AR-配当金HRの積上げ)
③期末純資産:CR

このように、換算レートが異なるため、換算すると貸借差額が生じることになるのですが、
この差額を埋めるのが「為替換算調整勘定」という項目です。

「為替換算調整勘定」 は、子会社への事業投資の結果として生じたものですから、「未実現の為替差損益」 として、
当該子会社が清算・売却されない限りはとして純資産の部に計上されます。

ざっくりではありますが、おさらいはここまでとします。

監査の現場では…

当期の動きであれば、

①前期末純資産額×(当期末CR-前期末CR)
→前期末の純資産から生じる為替換算調整勘定の変動

②(当期利益-当期配当)×(当期AR-当期CR)
→当期の利益剰余金から生じた為替換算調整勘定の変動

①と②の合計を推定値として、会社計上額との比較・検証をすることがあるのですが、

海外子会社が多くなり、累積年数も多くなってくると、 残高の検証が難しくってきます。
(私が関与している会社はまさにこの状況です。)

というのも、連結仕訳の多くは現在 システムによる自動化が進んでいますので、
適用レートなどを含め自動仕訳として積み上がってくるのが通常であり、

そうなると、過去に何かしらの誤りがあったとしても そのまま積み上がってしまうだけでなく、当然ながら適用レートもそれぞれの国ごと、年度ごとで異なるので累積残高の検証が難しくなるのです。

また、海外子会社の連結仕訳関連で貸借差額が生じた場合の解消手段として「為替換算調整勘定」が利用されやすく、それゆえに「ゴミ溜め」になりやすい科目でもあります。

IFRSに移行すると…

さて、そんな「為替換算調整勘定」ですが、IFRSを適用するにあたって、どのような取扱いとなるのでしょうか?

原則としては、IFRSに従って、(初めからIFRSを適用していたがごとく) 遡及計算することになります。

ただ、海外子会社を多く抱える企業の場合、国別、年度別、レート別に全て遡って把握し、
積み上げて計算するのは実務上困難です。

そこで、IFRSでは初度適用に限ってこれまでの為替換算調整勘定をリセット
(利益剰余金に加減して残高を0とすることができる)することが出来る規定が
用意されています。

IFRS1号 付録DのD13より ()内は筆者加筆

“しかし、初度適用企業は、IFRS移行日現在で存在していた換算差額累計額については、
これら(IAS21号)の要求事項に従う必要はない。初度適用企業がこの免除を使用するには、

“(a)すべての在外営業活動体に係る換算差額累計額を、IFRS移行日現在でゼロとみなす。

“(b)在外営業活動体のその後の処分による利得又は損失は、IFRS移行日前に生じた換算差額を除外し、
その後の換算差額を含めなければならい。”

実際の現場では…

私が関与しているクライアントは、為替換算調整勘定が膨らんできてきていることもあり、
この免除規定を利用してゼロスタートを切る形で動いています。
肌感覚としてはこの免除規定を利用している企業は多い印象です。

終わりに

今回はIFRS適用を想定した場合に実務上どのようなお話あるのか、という観点からお話してみました。
他の論点についてはまた別の機会に触れたいと思います。
以上、matsumotoでした。