IFRSはどこの国が作った基準か?

Hagiyamaです。

去年(2018年)の7月、公認会計士制度70周年記念式典における安倍総理からのビデオメッセージの中で、

「政府としてIFRS(国際財務報告基準)の導入を検討している」

というお話がされました。

世界ではIFRSの強制適用が進む中、日本におけるIFRS適用は任意であり、ユニクロや楽天といったグローバル化を公に宣言している上場企業のみが導入しているというのが現状です。

そのためか、IFRSという言葉は聞いたことがあっても、具体的などういうものかわからない方もいるのではないでしょうか。


IFRSは、主にヨーロッパが主体となって作成された全世界共通の会計基準です。

IFRSは、IASB(国際会計基準審議会)がその設定主体となっています。

IASBには日本人も参加しており、2019年7月1日からPwCあらた監査法人の鈴木理加氏がアジア・オセアニア担当理事として就任される予定です。

IFRSは、今から10数年前の2005年において、EU域内の上場企業を対象にIFRS強制適用されました。

このようにIFRSはヨーロッパ発の会計基準であり、世界の覇権を握るとされているアメリカが作ったわけではありません。いま世界を席巻しているiPhoneもGoogleもアメリカ産ですが、IFRSはヨーロッパ産です。

このことは、IFRSの原文にも表れています。

例えば、IFRSの原文には「recognised」(認識される)という単語が頻繁に登場しますが、これはイギリス英語独特の綴りです。

この単語をアメリカ英語で書くと「recognized」となりsではなくzで綴ります(ちなみに日本の学校で教えられているのはアメリカ英語です)

このようにIFRSの原文にイギリス英語というヨーロッパ色が出ているのは、会計先進国で会計士制度発祥国のイギリスの影響が強いということが挙げられます。


ただ、ヨーロッパ色の強いIFRSですが、IFRS15号(収益認識)に関しては、IFRSが米国基準(ASC 606号・収益)に寄り添った形をとっています。

収益認識のステップを5つにわけ契約や履行義務を認識し・・・という一見取っつきにそうな手法は、米国では上述の米国基準(ASC号606号・収益)においてすでに先行されていました。
これは、米国基準の収益認識基準の妥当性や公平性をIASB側(IFRS)が認めたという形になるでしょう。


これは余談ですが、「会計はヨーロッパとアメリカばかりが出てきて、一体日本の会計の立場はどうなってんだ?」

という疑問があるかもしれません。

IFRSが会計理論的に考えて完全に正しい処理を行っているかというと、必ずしもそうとも言い切れません。

例えば、IFRSの処理で「のれんの非償却」というものがありますが、これは会計理論的に議論されたものではなく、とある業界団体の圧力により生まれたと言われています。どうやら、のれん償却費の計上によって利益が圧迫されるのを避けたいという意図があったようです。

ところが、のれんは超過収益力の源泉ですので、この価値が未来永劫減耗しないということは考えづらいでしょう。高く買った企業の価値(=のれん)がずっと続くかというと、疑問が残るところです。

日本基準ではのれんを償却し費用化しますが、超過収益力は時間の経過とともに徐々に減退するという実態に合わせると、会計理論的にはのれんは償却するのが正しいのではないかと思います。