Hagiyamaです。
日本基準からIFRSへの調整内容について、どういった調整仕訳があるかについて検討もつかないといった方のため、IFRS調整の現場業務において頻繁に発生する項目を挙げました。ご参考になれば幸いです。
(ただし、これはあくまで一例であり全てを網羅していません。さらに、業種業態や会計処理の違いにより調整仕訳は企業により多種多様ですので、あらかじめご留意ください)
・売上高
売上高に関して、IFRSでは第15号(顧客との契約から生じる収益)という包括的な基準がありますが、日本基準にはまだ包括的な収益認識の基準が適用となっていません(日本における新収益認識基準の適用は、2021年3月期の予定となっています)
そのため、売上高については、日本基準からIFRSへの修正がほぼ確実に必要となります。
売上高に関する主な論点としては、次のようなものがあります。(一例)
- 売上計上のタイミング:出荷基準から着荷基準または検収基準へ修正
日本基準では出荷基準を採用していることが多いです。 - 履行義務が一時点ではなく一定期間となる場合:売上高の一時点認識から期間配分へ修正
例えば数年間のメンテナンス契約について一時点の収益として認識している場合、IFRSでは契約期間に当該売上高を配分する必要があります。 - 本人か代理人かの取引につき代理人となる取引がある場合:売上高を総額処理から純額処理へ修正
業界で言えば百貨店では大きな影響があると推測される項目です。損益や純資産には影響を与えないため、財務DD等では重要な調整項目ではありません。
・引当金
引当金も大きな論点です。下記に一例を挙げます。
- 有給休暇引当金
現在の日本の会計慣行では有給休暇引当金を計上していませんので、IFRS調整として有給休暇引当金を見積もって計上する必要があります(割とテッパンの項目です) - 貸倒引当金
債務者に関する日本基準とIFRSの区分方法は異なるため、IFRS第9号(金融商品)における予想信用損失モデルに基づき貸倒引当金の計上不足がある場合には、追加計上が必要となります。 - 退職給付引当金
日本基準とIFRSではギャップについて数多くの論点があります。たとえば、IFRSでは数理計算上の差異は包括利益で即時認識、過去勤務債務は即時損益認識、その他、割引率の決定方法や見直し、男女別の死亡率の見積もり、最低積立要件など。
・デリバティブの時価評価
日本基準で認められているような為替予約の振当処理や金利スワップの特例処理はIFRSでは一切認められていませんので、デリバティブを時価評価して損益計上する必要があります。
・連結グループ間での会計方針の統一
IFRSでは、連結グループ内で統一した会計方針の適用が要求されます。
棚卸資産の評価方法や固定資産の減価償却方法などについて、統一が必要な場合が多いです。内容自体は単純ですが、影響額の算出においてはシステムの改修が必要になるなど割と厄介な項目になることが多いです。
上記はほんの一例で実際にはこれの数倍もの調整項目の数があり、それらについて一つ一つ検討していかなければなりません。
IFRS調整仕訳や調整項目の一覧表を作るたび、IFRSと日本基準のギャップはまだまだ大きいのだと感じさせられます。