IASBが「全体的な表示及び開示」の公開草案を公表

Matsumotoです。 2019年も早いもので年の瀬ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
今回は最近のIFRSの動向についてお届けしたいと思います。
それでは早速はじめてゆきましょう。

目次

IASBが公開草案を公表

IASB(国際会計基準審議会)は 2019年12月17日付で『全体的な表示及び開示』の公開草案を公表しました(下記は原文サイトです)

Exposure Draft and comment letters – General Presentation and Disclosures (Primary Financial Statements)
https://www.ifrs.org/projects/work-plan/primary-financial-statements/comment-letters-projects/ed-primary-financial-statements/


(以下、本公開草案と記載することにします。) これは、IFRSにおける現行の
規定であるIAS第1号「財務諸表の表示」を置き換えることを提案するものです。
本公開草案へのコメントの募集期限は2020年6月30日までとされています。

どのようなことが変わるのか?

本公開草案で提案されている事項のなかで、主要なものは以下の通りです。

①純損益計算書において、営業損益等の小計を表示することを提案

現行のIFRSおよびIAS第1号では、純損益計算書で「純損益」と「収益」の表示までは定めているものの、日本の財務諸表等規則のように段階損益の表示までは
定めてはいません。それゆえに企業間で純損益計算の構造や表示にばらつきが
生じており、財務諸表の比較可能性が損なわれている状況にあります。

本公開草案においては、こうした状況への改善策として財務諸表において
以下の小計を定義し、純損益計算書で表示することを提案しています。

・営業損益
・営業損益並びに不可分な関連損益及びジョイント・ベンチャーの収益及び費用
・財務及び法人所得税前損益

さらに、本公開草案においてはこれらの小計を表示するに際して、純損益計算書において収益及び費用を
・営業
・(企業の事業と)不可分な関連損益及びジョイント・ベンチャーの収益び費用
・投資
・財務
の4つの区分に分類して表示することを提案しています。


さながらキャッシュ・フロー計算書の区分のようですが、財務諸表利用者の立場からすれば財務諸表の理解可能性が高まりそうなので、良い提案内容ではないでしょうか。
ただ一方で、個人的にイマイチ分かりにくいなあと思うのが、「 (企業の事業と)不可分な関連損益及びジョイント・ベンチャーの収益び費用」の区分です。
何をもって事業と不可分(もしくは不可分でない)という判断をするのか、
事業実態によって様々な解釈を生みそうですので、これからの動きに注目
したいところです。

②『経営者業績指標 』注記の創設

本公開草案においては、以下の要件をすべて満たす収益及び費用の小計の注記を
『経営者業績指標』 (Management Performance Measures=MPM、以下MPM)として開示することを要求しています。
1)財務諸表利用者との公のコミュニケーションにおいて、財務諸表の外で使用される
2)IFRSが規定する(財務諸表の)合計や小計を補完する
3)企業の財務業績のある側面に関する経営者の見解を示す
MPMは財務諸表の小計又は合計に限定されています。
従って、資本利益率などの財務情報や非財務財務情報は含まれないようです。

MPMの開示によって、こちらも企業の業績に対する経営者の見解が財務諸表利用者に示されることになるので、財務諸表がより理解しやすいものとなりそうな提案だと思います。

③その他の提案内容(のうち一部をご紹介)
・キャッシュ・フロー計算書を間接法で作成する場合、営業キャッシュ・フロー区分のスタートの利益を「営業損益」とする提案
現状では、間接法によりキャッシュ・フロー計算書を作成する場合に営業CFのスタートとなる利益が明確に定められていません。そのため、企業によっては税引前(税金等調整前)当期純利益以外の利益指標が用いらている場合もあり比較可能性が損なわれていました。今回の公開草案では、上記で「営業損益」が定義されることに伴って、間接法によるキャッシュ・フロー計算書のスタートの損益を「営業損益」とする提案がされています。

終わりに

今回の公開草案では、基本的に財務諸表の理解可能性や比較可能性を高めることを意図して提案されている項目が多い印象です。
半年間のコメント募集期間を経て最終的にどのような形になるのか、引き続き注目したいところです。

2020年も引き続きIFRSに関する情報を発信していきますので、宜しくお願い致します。
それでは皆さま、よいお年をお迎えください。

以上、Matsumotoでした。