実務対応報告18号(連結F/S作成における在外子会社の会計処理)とIFRS第16号(リース)

matsumotoです。涼しめな日が続いていますね。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。
今回は実務対応報告18号(連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い)と、IFRS第16号(リース)についてお送りします。
それでは早速はじめてゆきましょう。

目次

実務対応報告18号とは?

海外子会社を持つ企業の連結決算に携わっている方にとっては、おなじみの文書かと思います。実務対応報告18号とは、企業会計基準員会が作成している基準であり、正式名称は「 連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」です。日本の親会社が日本基準に準拠した連結財務諸表を作成するに当たり、
①在外子会社の財務諸表が国際財務報告基準(IFRS)
または
②米国会計基準
および
③国内子会社の財務諸表が修正国際基準
に準拠して作成されている場合、一定の修正を前提に、連結決算手続上利用することができる、というものです。

具体的には、日本基準と重要な差異がある下記の項目については、そのまま受け入れることはせず、
日本基準に合わせた修正を経たうえで取り込むことになります。
(ここでは、各項目の詳細な解説はせずに項目のみの記載とさせて頂きます。)

【修正項目】
①のれんの償却
②退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
③研究開発費の支出時費用処理
④投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価
⑤資本性金融商品の公正価値の事後的な変動を
 その他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整

IFRS16号(リース)との関係

さて、IFRS第16号(リース)ですが、2019年1月1日以後開始する事業年度の期首からの適用が始まっており、
3月決算の会社であれば、現在(2019年7月)はちょうどこの基準適用の最初の四半期を終えたタイミングとなります。

連結で取り込むこととなるIFRS適用済みの在外子会社が、リース取引における「借手」であることを前提とすれば、ファイナンスリース取引かオペレーティングリース取引かの区別はなくなっており、 当該子会社の財務諸表上、 資産を使用する権利を有している限りにおいては「使用権資産」が計上されていることになります。

このため、2020年3月期の第1四半期の日本基準での連結決算上、これをそのまま取り込むのか、それともこちらも日本基準との重要な差異に該当するものとして、修正を経て取り込むのかについて明確化を求める声 があり、修正項目に加えるか否かの検討が企業会計基準委員会の下で進められていました。

気になる検討結果は…?

リースに関して、日本基準での修正は不要となりました。
従って、今回の四半期およびそれ以降の決算において、「使用権資産」が計上された海外子会社の財務諸表をそのまま取り込めばよいことになります。

これは日本基準で作成されるF/Sにおいて、IFRSで計上される使用権資産(=リース資産)の妥当性を認めたことになると考えています。逆に言えば、今の日本基準の制定主体において、現在の日本のリース会計基準に論理的に不十分な箇所があると考えているとも言えます。

明確な出所などをご覧になりたい方は、下記をご参照ください。
(企業会計基準委員会のページに飛びます)
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2019/2019-0628.html

終わりに

わたしが関与しているクライアントではちょうどこの論点がこの四半期での話題となりましたので、今回取り上げてみました。実務的な負担増とならない結果となったのは朗報と言えるでしょう。

以上、matsumotoでした。